本:『声めぐり』齋藤陽道著
「書いてくれてありがとう。」
読み終えた時に、ふぅ、と浮かんできました。
聞こえる私にとって、聞こえないということは、ずっと、わかりたい、でもわからない世界です。
手話に出会う前の自分と、手話を知ってからの自分。手話ということばをもった状態でふれる音楽、皮膚の声…。
齋藤さんは、ご自分の心をえぐるように書いていきます。
そのことばの凄みに圧倒されながら、読み進めていきました。
聞こえない世界を、ぴったりとわかることはできないけれど、齋藤さんのことばを読むことで、少し見せてもらえた、そんな気がします。
同時に、齋藤さんは、目も、耳も、皮膚も開かれて、向き合う人がさまざまな方法で発する「声」を聴く人でもあります。
相手と自分がふっと「なじむ」まで待って、その瞬間を写真に切り取る。
そんな向き合い方があるのか。
齋藤さんの写真には、なんとも言えないやわらかさがあるなぁ、くらいにしか感じ取れていなかったのですが、写真にうつる人と齋藤さんの間に流れる空気は「なじんで」いたんですね。
聞こえない人とかかわる方は、ぜひ。